
ロンドン大学バーレット校の講師で写真家のサイモン・ケネディー (Simon Kennedy)氏が送ってきた写真には、ロンドン市内南部にある解体寸前の団地が撮影されている。

荒廃した団地内外の共同スペースを中心に撮影された写真は、先月ロンドン大学バーレット校(Bartlett School of Architecture)で展示された。

写真の著作権はSimon Kennedy

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ケネディー氏及び建築史家ベン・キャプキン氏によるプロジェクトに関する詳細は以下の通り。
ロンドン南部にあるHeygate Estate は1974年に完成しました。この団地は現在空き家で、解体が間近に迫っています。

635 x 508版:Heygate Abstractedは写真で構成されたインスタレーションで、2010年にケネディー氏が何度もこの地に足を運んで撮影した集大成です。大判カメラを使用して、団地の公共スペース周辺の風景に焦点を絞って繰り返し撮影を行いました。写真内の空間は、プリズムを使って拡大されました。

ここにあるもう一つのモダニズムは、歴史というゴミ箱や遺産という盲目的追従から救い出す価値のあるものです。20世紀の急進的なモダニズムは、市場や国家という歯車の中で、成功や失敗、さらに試行錯誤や破たんを繰り返してきた様々な思想の潜在的な指標であり、その点において今後も有益なものであり続けるのです。それらの思想は、何十年もの間私たちに盲目的追従を許してきた独裁的地位により、荒廃した現状況下においても、かすかな可能性を感じさせてくれるのです。

Heygate Abstracted
サイモン・ケネディー氏が撮影したHeygate Estate写真は、モダニズムの否定的な面ではなく肯定的な面と、ユートピア的な都市構想が復活する可能性を私たちに考えさせてくれます。そうすることにより、現代建築のあり方を議論する上で一つの道筋が見えてくるのです。

住宅不足に悩む今日、これらの写真は、サザーク区議会が決定した取り壊しの正当性、換言すればこの建物が本質的に無用の長物であるかどうかを私たちに問いかけています。

ロンドン南部の建築を紹介したガイドブックの中で、ブリゲット・チェリーとニコラス・ペヴスナー両氏は、1968年から1974年にかけて建築されたこの建物の意味を見出そうとしています。圧倒されるような厚板の建築と、ロンドンのサザーク自治区が掲げた巨大な建築構想を明確に評価する一方で、両氏はHeygateを「工業化社会における建築物の最たる負の遺産」と位置づけています。

戦後の「モダニズム崩壊」を思い出させる数少ない場所として挙げられるのが、建築面や社会性において長い間「荒廃と堕落」の象徴という烙印を押されてきたエレファント&キャッスル周辺です。この巨大な公営住宅を抱えた旧市街地中心部は、そこに住む人々同様、近年目覚ましい発展を遂げたロンドンの影にほとんど見捨てられ崩壊した地区の典型的な例なのです。

ケネディー氏が撮影した長年使われていないと一目で分かる住宅や店舗の写真は、近代「再生」への道のりが永遠と言わないまでも悲惨な程先延ばしになってきた結末を強く意識させるものです。

それらの写真に写し出されている崩壊寸前の都市景観は、トニー・ブレアー前首相がHeygateと似たような状況下にあり、新しい労働党政権誕生の一翼を担ったAylesbury Estateを「掃き溜め」と称した問題発言により、写真家やジャーナリストの脚光を浴びています。

建築家でもあるケネディー氏が整然とした建物の外壁や公共のスペースに視線を向け、建築物の決定的瞬間を選び被写体や視点を絞ることで、論争の歴史や人々の生活感覚から分離した建築が浮かび上がるのです。

そこから生まれる写真には、この建築本来の姿が写し出されています。しかし、哀感を感じるのは、本来人が集う場所に人がいない空虚な雰囲気が漂っているからです。

これらの写真が示す特質は、政府による住宅供給からの急速な撤退や、低所得者を都市部の周辺に追いやる住宅手当への移行が進む今の時勢を反映していると言えます。
ベン・キャプキン

投稿/キャサリン・ウォーマン
翻訳/ハートフル・ジャパン 鳴海 亨
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