Tokyo Designers Week 2008の100%Awardにてグランプリを受賞した「CREATED IN HOLLAND」は、オランダの将来有望な14のデザインスタジオが出展。個性的なアイディアに満ちたインテリア作品が並ぶブース内は、多くの来場者が訪れ賑わいを見せた。
オランダは、かつて鎖国時代の日本が唯一、交易を許可した西洋の国。伝統的な陶磁器などの工芸品が大切に受け継がれると同時に、一線で活躍するデザイナーたちの作品はダッチデザインと呼ばれ、世界的にも評価が高い。シンプルかつ機能的で、デザイン性・質の高さともに優れたダッチデザインは、多くの日本人にも愛され、グローバルなブランド力を持っているのだ。また、2003年のニューヨークタイムス紙に“疑いなく現在、世界一のアカデミーである”と評されたアイントホーフェンには、世界中からデザイン学生が集まり、今後もダッチデザインへの注目は高まるばかりだ。
「食べることと飲むことが大好き」と言う磁器作家のSander Luskeは、作品ひとつひとつに手で釉薬をつけたというテーブルウェアを出展。カップや皿についた釉薬の模様はひとつひとつ異なり、工業製品にはない豊かな表情を楽しめる。
「青の点がたくさんついているこのカップは、新しいコレクションなんだ。
釉薬はカップを円状に並べて、跳ね散らすようにつけたんだよ。カップの飲み口の所に黒い釉薬がついているコレクションは、逆さにして1つひとつを釉薬に漬け込んで模様を付けたんだ。どれ1つとっても同じ模様はないから、釉薬の付き方が好きなものを探して使って欲しいな」とはSander Luske。 釉薬の素材は、オランダの伝統工芸品、デルフト焼のブルーと同じものを使用している。
100%天然の馬毛を編みこんだファブリックを出展したMarianne Kempは、“丁寧に気持ちを込めて編む”職人。独自の織り技術を用いられた作品は、すべて家内生産で、ウォールパネルやランプシェード、ブライドなどに用いることができる。
「モンゴリアンホースの尻尾の毛を蠅のたからない冬の内に刈って、イギリスに送って染めるの。オリジナル製法での機械織りが主流だけれども、この赤いマットは手織りなのよ。ファブリックはブラインドとしてもマットとしてもランプシェイドとしても使えるわ。それぞれが好きなようにアレンジできるものなの」
イギリスに送られた馬毛は、英国のジョン・ボイド・テキスタイルズで染色、機械織りされている。ランプシェードはデザイナーのスタジオで制作されている。
ヘウォーンはLoes Wagemansが学校卒業と同時に作った会社で、2009年1月に10年目を迎える。ヘウォーンとは「普通」の意。伝統的な素材とテクニカル素材をコンテンポラリーデザインに巧みに活かし、生活用品のほか、アクセサリーや子ども用グッズのコレクションがある。
監督・デザイナーのEllis Rowoldは語る。 「ヘウォーンのコレクションは、オランダの心と身体に障害を持つ人たちのための作業場(ソーシャル・ワークプレイス)で作られているの。
彼らが安心して働ける環境と機会を提供しようとしたことが始まりなのよ。 フェルト素材はとっても丈夫で、さまざまな製品を作ることができるわ」
鮮やかな色合いのクッションやぬいぐるみは、シンプルでモダンながらもどこか懐かしい風合いで、オランダだけでなく、アメリカやイギリス、日本、ドイツ、ニュージーランド、ベルギーなど、世界各国で販売されている。
(写真右)ジャージー素材のクッションカヴァー“cushion Fritz”はこれから発売予定のコレクションだ
ATTIはアムステルダム在住のイラストレーター兼デザイナー。そこはかとなく少女のような可愛らしい笑顔を振りまく彼女の作品は、イメージ通りに陽気でキュート&ピュア。猫のクッションや雲の形をしたクッションは、年齢を問わず女性の奥底にある乙女心をかき立てる魅力が持つ。
「人々の心を和ませることのできる作品作りを目指しているの。ね? こうして抱きしめたくなっちゃうでしょう? この猫のクッションはフリース素材でできていて、お花のプリントはシルクスクリーンを用いているのよ」
Atti product lableはインテリアのみならず、ファッション、アートワーク、コンセプチュアル・シンキングなど分野を問わず提供されており、日本での今後の活躍も期待されている。
CREATED IN HOLLANDのブース内でも注目を集めていたのがThe Cottage Industryのステーショナリーだ。一見、普通に見える作品なのだが、小さな驚きを伴うユニークなアイディアを盛り込まれているのが特徴だ。
ステーショナリーデザイナーのDamian O'sillivanにデザインアイディアの源を聞いてみた。
「デザインを考えるとき、僕はいつも対極のものをひとつにしたらどんな風になるかを考えてみるんだ。
例えばこの豚の貯金箱は肉屋さんがブタを屠殺するときの肉の部位に沿って線が描かれているのだけれども、その中に書かれている単語は生きていくのに役に立つ格言なんだ。つまり生と死が共存している貯金箱ってわけだね。
こっちのマグカップも同様に対極のシーンが盛り込まれているんだ。
これはオフィス用に作ったマグカップなんだ。空っぽの時は色が黒くてOFFの文字があるんだけど、実はお茶やコーヒーが入ると湯の温度を感知して、色が真っ白になるんだ。そしてOFFの文字に代わってONの文字が浮き出てくる仕掛けというわけさ。
コーヒーブレイクの前って疲れて気持もOFF状態だろう? でもコーヒーブレイクの後は元気を取り戻す。この前後のシーンを表現したデザインというわけさ。面白いだろう?」
フェアトレードとデザインは同じ価値観として共存ことを体現しているのがXO+の作品だ。厚みのあるスタイリッシュなデザインの中に手作りの温かみを醸し出す渦巻き状のラグやヒマラヤの植物から作られたロクタ紙のクッションはネパールで作られている。デザインはすべてCELIA SUZANNE SLUIJTERによるものだが、製造しているのは彼女の会社で働くネパール人の女性たちだ。
CELIAの想いは深く熱い。
「大切なのは製品としてデザインと質が優れていることなの。世界のために良いことをしようと考えてフェアトレードの製品を買うんじゃなくて、本当に気に入って、心から欲しいと思ったものを購入したら、後でタグを見て実はフェアトレードの製品だったのだと気づくような、そんな製品を作りたいといつも思っているわ。 だからこそ、素晴らしいデザインと正しい製法、そして天然素材にこだわっているの。 ネパールロクタでできたクッションは洗濯だってできるのよ。
ネパール人たちは自分たちの文化は先進国より劣っていると誇りを持てずにいるの。その価値は同等なのに。だからわたしは、彼女たちが自分の文化に誇りを持ち、生活が向上していくのを目標にこの仕事をしているのよ。
国力という意味で貧しい国をサポートするのは先進国の責任でもあると思うの。わたしはお金はないけれど、たまたま先進国に生まれたので、教育を受けナレッジを持つことができた。この知恵やデザインスキルなら分けてあげることができるでしょう?
仕事がなく肉体労働をするネパールの女性たちのために19の会社を作ったわ。この活動に社会的サポートを受けていないことがすごく大切なの。普通の会社として製品が正規の値段で取引されれば、彼女の子供たちは学校へ行き多くを学ぶことができるわ」
いまは100% designのような海外での商談の場にネパール人の女性たちが立つことはない。そういったノウハウを未だ持っていないからだ。だが彼女たちがいずれ独り立ちし、自分たちで交渉できるようになるだろうと彼女は真っ直ぐな眼差しで語った。
DRAAGとはオランダ語で持ち運ぶ(Carry)の意味。その名の通り、ノートパソコンをスタイリッシュかつ安全に持ち運びたい人にうってつけのPCキャリーバッグブランドがDRAAG! DESIGNだ。
デザイン性だけ取って見ても思わず衝動買いしたくなるDRAAG! DESIGNのラップトップ・バッグ・シリーズは、立体の浮き上がった特別素材で作られ、パソコンをしっかり保護している。Wrapモデルやセレブモデルは、PCを風呂敷のように包み込めるデザインになっており、広げるとその場で作業スペースとなる優れものだ。
「この素材は完全ウォータープルーフなの。こうやってお水をかけても払ってしまったら乾いているでしょう? しかもちゃんと実用性も考えていて、パソコン以外の物だってたっぷり入るのよ」
ニコニコとほほ笑みながら、防水のデモンストレーションをしてくれたディレクターのNathalie Hendriksは、自ら製品を担いでくれた。
DRAAG! DESIGNは現在、日本からはWEBのみ購入できる。国内での販売先を模索中だ。