従来から、日産自動車では日本のものづくりを受け継ぐ次世代のデザイナーの育成が重要だと考えている。そのため、大学生や専門学校生を対象にした「日産デザインオフサイトインターンシップ」や、小学生を対象にしたデザイン出張授業「日産デザインわくわくスタジオ」などの取り組みを積極的に行ってきた。今回のデザインサンガクへの参加はこの一環として位置づけており、学生が自動車デザインのノウハウに触れ、プロと同様のモノ作りを体験することで、若手デザイナーの育成支援につなげたいという狙いがある。
ワークショップ開催にあたっては、プロダクトデザイン学科だけでなくグラフィックデザイン学科や建築学科の学生なども広く参加し、プロジェクトデザイナー米谷ひろし氏指導のもと、計6回のワークショプを行った。そこから生まれたのが、生き物から新しい動きを得ようというアイデアだった。ワークショップを経て生まれた「空間」「プロダクト」「映像」という3つのアプローチを融合させ、未知の生命体とその住み処を表現するとういうことで、最終的な展示の方向を決定した。
日産自動車デザイン本部の倉持卓司氏はワークショップ全体を振り返る。「学校だけでなく専門領域が異なる学生が垣根を越えて一つの作品に取り組んだため、当初はブレーンストーミングもスムーズに進まず先行きが懸念されたが、方向性が決まってからの学生たちのパワーはとても印象的だった。会場設営時には、最後の最後まで妥協することなく作業に取り掛かる姿に心を打たれた。イベント終了後に生まれた学生の連帯感、達成感に満ちた表情、『プロジェクトに参加して良かった』という笑顔には、日産自動車として一番感じてもらいたかったことをしっかり受け止めてくれた証だ」と感じている。
今回のプロジェクトが、成長のためのよい機会となったのは学生たちだけではない。日産自動車では、インストラクターとして若手のインハウスデザイナーやモデラーを投入した。全体のスケジュール管理やデザインを統括することで、自社の若手デザイナーの育成にも大きく役立ったという。学生たちの斬新なアイデアにより発想の枠を超えた展示が生まれ、インハウスデザイナーたちにも良い刺激になったようだ。
写真上:ブース内観。自然の造形をイメージしたブースの中には、生き物から得た新しい動きのシーンが提案されている。
写真下:新しい動きをするキャラクター。このキャラクターが映像の中で様々な新しい動きを表現している。